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PPAPメールはリスクがある?脱PPAPが進む理由と代替案を解説
PPAPメールはリスクがある?脱PPAPが進む理由と代替案を解説

パスワード付きZIPファイルをメールで送り、後からパスワードを別送する「PPAPメール」。

一時は多くの企業で使われていましたが、今ではセキュリティ上の問題や手間の多さから官公庁や民間企業でもPPAPを使わない方針が増えています。

この記事では、PPAPメールの課題やリスク、そして企業でよく使われている代替手段について解説します。

PPAPメールとは?その仕組みと成り立ち

「PPAP」とは?
PPAPとは、パスワード付きZIPファイルをメールに添付して送信し、その直後に解凍用のパスワードを同じ経路で別途送信する一連のファイル共有手法を指す言葉です。この名称は、以下の4つの単語の頭文字を取って命名されました。

    P: Password付きZIPファイルを送ります
    P: Passwordを(別のメールで)送ります
    A: 暗号化(Angoka)
    P: プロトコル(Protocol)

この手法は、機密情報や個人情報を含むファイルをメールで送信する際に、セキュリティ対策の一環として広く利用されてきました。

「PPAP」とは?

一見すると、ファイルを暗号化し、パスワードを別送することで安全性が高まるように思えるため、多くの企業や官公庁で標準的な運用ルールとして採用されました。しかし、この手法には多くの脆弱性が存在することが専門家から指摘されており、近年ではその利用を見直す動きが急速に広がっています。

なぜ広く普及したのか?
PPAPが普及した最大の理由は、特別なツールやシステムを導入することなく、誰でも手軽に実施できる「手軽さ」にありました。2000年代後半から2010年代にかけて、個人情報保護への意識が高まる中で、企業は「添付ファイルは暗号化すること」という内規を設けました。その中で、OSの標準機能だけで対応できるパスワード付きZIPファイルは、追加のコストや専門知識を必要としないため、非常に便利な解決策として定着しました。

また、「ファイルとパスワードを別のメールで送る」という行為が、セキュリティ対策を実施しているという形式的な証拠となり、送信者の心理的な安心感にもつながりました。情報処理学会誌では、このような形式的なセキュリティ対策が「儀式セキュリティ」であると指摘されています。この「儀式」が、PPAPが形骸化しながらも長年にわたって利用され続ける一因となったのです。

PPAPメールが抱える5つの重大なリスクと問題

PPAPは手軽さから広く普及しましたが、その裏には見過ごすことのできない5つの重大なリスクと問題が存在します。これらの問題点が、政府や多くの企業が「脱PPAP」へと舵を切る直接的な原因となっています。

1. 暗号強度の脆弱性
PPAPで利用されるZIPファイルの暗号化は、現代のコンピュータの計算能力をもってすれば、比較的容易に解読されてしまう可能性があります。特に、古くから使われている「ZipCrypto」という暗号化方式は脆弱性が指摘されており、専用のツールを使えば短時間でパスワードを解析されるリスクがあります。重要な情報を保護するための暗号化が、実際には十分な強度を持っていないという点は、PPAPの根本的な問題の一つです。

2. ファイルとパスワードが同一経路
PPAPの最大の問題点として指摘されているのが、暗号化されたファイルとそれを解凍するためのパスワードが、どちらも同じメールという経路で送信される点です。もし攻撃者がメールの通信経路を盗聴していた場合、ファイルが添付されたメールと、パスワードが記載されたメールの両方を容易に入手できてしまいます。これは、金庫とその鍵を同じ箱に入れて送るようなものであり、セキュリティ対策としての意味を成しません。

3. マルウェア検知のすり抜け、ファイルのウイルスチェックができない
PPAPは、企業のセキュリティ対策をかえって無力化してしまうという、極めて深刻な問題を引き起こします。パスワードで暗号化されたZIPファイルは、セキュリティシステムがファイルの中身を検査することを妨げてしまいます。この仕組みを悪用するのが、「Emotet」に代表されるマルウェアです。実際に、2020年9月にはこの手口による攻撃が急増し、IPA(情報処理推進機構)への相談がわずか2日間で23件に達するなど、大きな被害をもたらしました。

参考: 相談急増/パスワード付きZIPファイルを使った攻撃の例(2020年9月2日)

4. 利便性の低下と業務効率の悪化
セキュリティ上の問題だけでなく、PPAPは送信者と受信者の双方にとって大きな負担となり、業務効率を著しく低下させます。送信者は、ファイルを圧縮してパスワードを設定し、メールを2通に分けて送信するという手間が発生します。受信者側も、2通のメールを探し出し、パスワードをコピー&ペーストしてファイルを開くという煩雑な作業を強いられます。特に、モバイルデバイスでは取り扱いがさらに面倒になり、組織全体の生産性を大きく損なう要因となります。

5. 受信側の負担や誤送信トラブル
PPAPは、受信側のストレージを圧迫するという問題も引き起こします。ファイル本体とパスワード通知という2通のメールを受信するため、メールボックスの容量を無駄に消費します。さらに、パスワードの送り間違いというヒューマンエラーのリスクも常に伴います。このような誤送信は、意図せずして情報漏洩につながる可能性があり、企業の信頼を揺るがす重大なインシデントに発展する危険性をはらんでいます。

政府と企業が進める「脱PPAP」へのシフト

PPAPが抱える数々のリスクが顕在化する中、政府と企業は本格的に「脱PPAP」へと舵を切り始めました。

政府機関による廃止声明とその背景
脱PPAPの動きを決定づけたのは、2020年11月24日の政府の発表でした。デジタル改革担当大臣であった平井卓也氏が、内閣府および内閣官房において、11月26日からPPAPを廃止する方針を明らかにしました。この決定の背景には、セキュリティリスクへの強い懸念と、行政のデジタル化を推進する上での非効率な業務慣行の見直しという目的がありました。この政府の方針転換は、多くの民間企業に衝撃を与え、「PPAPはもはや安全な対策ではない」という認識を社会全体に広める大きな転換点となりました。

民間企業での運用見直しの動き
政府の廃止方針を受け、民間企業でもPPAPの運用を見直す動きが急速に加速しました。

    大手通信事業者の対応: IIJは、2022年1月26日からPPAPで送信されたメールを原則として受信拒否する対応を開始しています。
    金融業界の動向: 2025年5月には金融庁が金融機関に対し、PPAPを見直すよう要請しました。金融庁幹部は「パスワード付きファイルの送付は基本的に行うべきではない」と明言しています。
    代替手段の普及: JIPDECの2024年調査では、企業の52.4%が代替策として「クラウドストレージサービス」を導入済みです。

中小企業にとっての今後の課題
一方で、中小企業ではコストや人材不足から脱PPAPへの対応が遅れる傾向にあります。しかし、サプライチェーン全体のセキュリティ強化が求められる中、対応の遅れは取引機会の損失に繋がる可能性もあります。自社の状況に合わせ、低コストで導入できるクラウドサービスなどを活用し、段階的にでも脱PPAPを進めることが重要です。

PPAPメールの代替手段とは?クラウド活用が主流に

PPAPのリスクが広く認識されるようになり、多くの企業がより安全で効率的な代替手段へと移行しています。現在、主流となっている4つの代替手段について解説します。

1. メール自体を暗号化する「S/MIME」「PGP」
S/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)やPGP(Pretty Good Privacy)は、メールの内容そのものを暗号化する技術です。公開鍵暗号方式を用いてメール全体を保護するため、セキュリティレベルは格段に向上します。しかし、送信者と受信者の双方が同じ技術に対応している必要があり、証明書の管理や全従業員への導入・教育コストが課題となります。

2. ZIPとパスワードを「別経路」で送る運用の徹底
ファイルはメールで送り、パスワードはビジネスチャットやSMS、電話といった別の通信手段で伝える方法です。同一経路のリスクは回避できますが、手間が増大し、ヒューマンエラーが発生する可能性も残るため、応急処置的な対策と言えます。

3. クラウドストレージの法人向け活用が最も現実的な選択肢
現在、PPAPの代替手段として最も広く採用されているのが、法人向けのクラウドストレージサービスを利用する方法です。ファイルをクラウドストレージにアップロードし、そのファイルへのアクセス用URLを生成して、メールで相手に通知します。この方法の利点は以下の通りです。

    ファイルの実体をメールで送信しないため、メールボックスの容量を圧迫しない
    マルウェアチェックをすり抜けるリスクがない
    URLへのパスワード設定、アクセス期間やダウンロード回数の制限が可能
    IPアドレスによるアクセス制御など、高度なセキュリティ設定が可能

4. セキュリティ対策のあるファイル転送サービスを利用する
大容量・高機密のファイル転送に特化したサービスです。通信経路やファイルの暗号化はもちろん、詳細なログ管理機能や上長承認機能などを備え、企業の内部統制やコンプライアンス要件にも対応しやすいのが特徴です。

GigaCC ASPで実現する「安全+効率的」なファイル共有

PPAPの代替サービスを選定する際は、セキュリティ、使いやすさ、柔軟性が重要なポイントです。市場で提供されている法人向けファイル共有・転送サービスの一つに、日本ワムネットが提供する「GigaCC ASP」があります。このようなサービスは、脱PPAPを実現し、安全で効率的なファイル共有環境を構築するための具体的な解決策となり得ます。

1.GigaCC ASPとは?
GigaCC ASPは、20年以上の提供実績を持つ純国産の法人向けファイル共有・転送サービスです。企業間の機密情報や大容量のファイルを安全かつ確実にやり取りすることを目的に開発されており、製造業、金融業、建設業、官公庁など、高いセキュリティレベルが求められる多くの導入実績があります。ファイルの実体をメールに添付するのではなく、サービス上にアップロードされたファイルへのURLを通知する方式を採用しており、PPAPが抱える根本的な問題を解決します。

2.「誤送信・漏えい」を仕組みで防ぐ安心のアクセス制御機能
ファイル共有における最大のリスクの一つが、誤送信による情報漏えいです。多くの法人向けサービスでは、このリスクを低減するための機能が実装されています。例えば、ファイル送信時に上長承認を必須とするワークフロー設定が可能です。また、共有するファイルやフォルダごとに、アクセス権限を細かく設定でき、誰がいつどのファイルにアクセスしたかという操作ログが詳細に記録されるため、高いトレーサビリティを確保できます。

3. 直感的操作でマニュアル不要。誰でも使えるUIで現場に浸透
新しいシステムを導入する際、自社の従業員だけではなく、取引先担当者もスムーズに利用できるかどうかは重要な要素です。GigaCCはPCリテラシーに依存しない、マニュアル不要の直感的な操作でファイル共有やファイル送信を行うことができることが高く評価されています。PCはもちろん、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスからも、場所を選ばずに安全なファイルアクセスが可能。シンプルな操作でファイルを扱えるユーザーインターフェースは、ITリテラシーを問わず、組織全体へのスムーズな浸透を促進します。

4. 現場に寄り添う柔軟な導入形態と運用サポート
企業の規模や業種、セキュリティポリシーは様々であり、ファイル共有サービスにはそれぞれに合わせた柔軟な導入形態が求められます。クラウド型のASPサービスは、自社でサーバーを構築・管理する必要がなく、低コストかつ短期間で導入を開始できるため、特に中小企業にとって有力な選択肢となります。また、導入時の初期設定支援や、管理者・利用者向けのトレーニング、運用開始後の問い合わせに対応するヘルプデスクなど、充実したサポートが提供されているサービスを選ぶことで、安心して利用を継続することができます。

PPAPメールまとめ

本記事では、PPAPメールが抱える課題やリスク、そして政府や企業で進む「脱PPAP」の動きと、その具体的な代替手段について解説しました。

PPAPメールは「もはや守られない」手法
かつては手軽なセキュリティ対策として広く採用されたPPAPですが、その実態は「儀式セキュリティ」に過ぎず、現代のサイバー攻撃に対しては無力であることが明らかになっています。暗号化されたZIPファイルがウイルス対策ソフトのスキャンをすり抜けてしまう脆弱性は、Emotetのようなマルウェアの格好の標的となりました。また、ファイルとパスワードを同じ経路で送るという根本的な欠陥は、通信が盗聴されれば容易に情報を搾取されるリスクを常に内包しています。

企業に求められる”次の一手”
企業にはPPAPという旧来の慣習から脱却し、より安全で効率的なファイル共有方法へと移行する「次の一手」が求められています。脱PPAPは、単に自社の情報を守るだけでなく、取引先や顧客を含むサプライチェーン全体のセキュリティレベルを維持する上での社会的責務とも言えます。すでに半数以上の企業がクラウドストレージなどの代替手段を導入しており、この流れは今後さらに加速していくでしょう。

GigaCC ASPで一歩先のファイル共有へ
PPAPからの移行を検討する上で、法人向けのファイル転送・共有サービスは最も現実的で効果的な解決策です。GigaCC ASPのようなサービスは、PPAPが抱えるセキュリティ上の問題を根本から解決し、企業のコンプライアンス要件にも応える機能を備えています。上長承認ワークフローや詳細なアクセスログ管理、柔軟なアクセス権限設定といった機能は、情報漏洩のリスクを最小限に抑え、企業の内部統制を強化します。来るべき「脱PPAP時代」に向けて、信頼できるサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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