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Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:自転車もITが支援

Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:自転車もITが支援


 欧州で自転車の街と言えば、真っ先に思い浮かべるのがオランダのアムステルダムだ。街中に自転車専用レーンがあり、軽快なスピードで走ってゆく。一方、デンマークのコペンハーゲンも自転車都市だった。市をあげて「自転車化」を図るコペンハーゲンは、ITSを自転車にも応用していた。

隠れた自転車都市

 先進的な交通システムを議論する「ITS World Congress(ITS世界会議)」は、欧州、米州、アジア・大洋州を巡回している。2年先の開催都市まで決まっており、次回2019年はシンガポール、2020年は米国・ロサンジェルスとなっている。

 2018年の開催地がコペンハーゲンであることは、2016年のメルボルン大会で発表された。メルボルンは、ある経済誌で「世界一住みやすい街」として何年か連続して選ばれているそうで、司会者もそれを誇っていた。コペンハーゲンの市長の1人(前回記したように、同市は分野毎に市長がいる)が挨拶に立ち「わがコペンハーゲン市も、別の経済誌で世界一住みやすい街との呼称を連続して頂いています」と挨拶した。司会の女性(オーストラリアの有名なテレビ司会者とのこと)は、顔色一つ変えずに「市長さん、その件は後でゆっくりお話ししましょう」と軽く受け流したが、筆者には昭和のマンガのセリフにあった「後で、体育館の裏に来なさい」と言っているように聞こえた。市長は無事だったのだろうか。

実は、メルボルンに集まった人達を驚かせたのは、このやりとりではない。市長が示したスライドでは、コペンハーゲンの人々が雪の中、自転車で行列を作って走っていることだ(写真1)。これはすごい。

2016年のITS世界会議で示された、コペンハーゲンの様子。雪の中、人々が自転車に乗っている!【写真1】2016年のITS世界会議で示された、コペンハーゲンの様子。雪の中、人々が自転車に乗っている!

展示会場通り抜けも

 オランダは、自転車の国として知られている。アムステルダムは2000年代半ば以来、放送機器の国際的展示会IBCのために毎年訪れているが、その自転車の普及には驚かされる。アムステルダム市内では、自転車専用レーンどころか、自転車専用道も整備されている。通勤通学の時間帯はもちろん、それ以外の時間帯も、人々は当たり前のように自転車に乗っている(写真2)。アムステルダム中心部からやや離れた所にある展示会場「Amsterdam RAI」も、その中の通路を通勤の自転車が走ってゆく。近隣住民が通り抜けられるようになっているのだ(写真3)。もちろん、自動車の通り抜けはできない。自転車での移動は、歩行と同様に扱われているのだろう。

航空会社のお姉さんも制服姿で自転車をこぐ【写真2】航空会社のお姉さんも制服姿で自転車をこぐ

展示会場Amsterdam RAIの中を自転車で駆け抜けてゆく人々【写真3】展示会場Amsterdam RAIの中を自転車で駆け抜けてゆく人々

 驚いたのが、幼児用の「箱」だ。日本では、幼児運搬用の3人乗り自転車があるが、オランダは乗り方が違った。オランダでは、ハンドルのはるか先に前輪が付いていて、ハンドルと前輪の間に箱がセットしてある。ここに子供達を乗せる(写真4)。子供の視点は非常に路面に近く、スピード感溢れる景色を楽しめると思われる。子供達も親も、ヘルメットはしていない。この点をオランダの友人に問うと「幼い時から自転車に乗っているからねぇ。鍛え方が違うよ」と、気にしていない様子だった。

前カゴに子供達を乗せる姿は、オランダでよく見掛ける【写真4】前カゴに子供達を乗せる姿は、オランダでよく見掛ける

自転車の編隊走行

 アムステルダムからコペンハーゲンへの飛行時間は1時間、欧州の国々の近さを時間する。ITS世界会議の参加者は、現地のMaaS(Mobility as a Service)アプリを使うと、会期中は鉄道、地下鉄、バスなどが無料で乗れることになっている。ITS世界会議のアプリから「交通」のセクションを呼び出すと、個別のコードが発行され、これがMaaSアプリに渡されるようだ。発行は受けたが、別に自動改札があるわけではなく、そこにアプリをかざしたりする必要は無かった。検札に備えて、アプリ画面を呼び出してから鉄道で、中央駅へ。(結局、鉄道では検札に遭遇しなかったがバスで乗車証提示を求められた。担当官は、首をひねっていたが「ま、いいか」という表情で去って行った)

 コペンハーゲンには、以前にも学会で来たことがある。その時は、有名なチボリ公園(Tivoli Gardens:写真5)近くに宿を取り、ブラック・ダイヤモンドとの通称があるデンマーク王立図書館新館に通った。残念ながら、ホテルと学会会場を徒歩で往復するだけだった。今回は、ホテルからITS世界会議会場までは、地下鉄(一部高架)。少し、電車の旅が楽しめる。

チボリ公園正門。中央駅の駅前に公園はある【写真5】チボリ公園正門。中央駅の駅前に公園はある

 ホテルから、地下鉄駅までは徒歩5分。大通りを渡ろうとして驚いた。自転車がひっきりなしにやってくる。しかも、二列縦隊で(写真6)。自転車の津波に流されかけた1982年の上海ほどではないが、迫力十分。見れば、信号待ちでは遠くまで列が続いている。

朝の通勤時間帯、2列縦隊で自転車が走って来る。自転車専用信号が備わった交差点もある【写真6】朝の通勤時間帯、2列縦隊で自転車が走って来る。自転車専用信号が備わった交差点もある

 アムステルダムの自転車が、個々に高速に走ってくるとすれば、コペンハーゲンは編隊を組んでいる、といった感じだ。走り方にもお国柄があると見た。交通シミュレーションで、走行パターンをモデル化する際、この違いは取り込んだ方が良さそうだ。

自転車用ITS

 コペンハーゲン市のプレゼンテーションで、同市は自転車利用者にも交通情報を提供していることが語られた。同市の交通管制センターに接続された表示板が5箇所に設置されているという。その一つを見てきた。

 表示板は、ドットマトリクスのLEDで自在な文字、図形が描けるものだった(写真7)。ITS世界会議での紹介では、混雑情報や経路毎の予想時間を表示できるとの話だった。色は、白、赤、緑が使える。訪問時は「右側通行」「停止前に手信号を」をいった安全スローガンが表示されていた。降り始めた雨の中、人々は表示板横をかなりの速度で駆け抜けていた。

自転車向けの電光表示板は、市の交通管制センターとつながっているそうだ【写真7】自転車向けの電光表示板は、市の交通管制センターとつながっているそうだ

犬の乗車券

 コペンハーゲン国際空港(COP)へは、鉄道もしくは地下鉄で行かれる。往きは鉄道を使ったので、帰りは地下鉄で行こう、と決めた。出国の日は会期外なので無料パスは使えない。一回限りのチケットもあるが、RFIDの体験を兼ねて「タッチ式切符(ICカード)」を購入した。自販機には、「大人」「子供」の他、「犬」の切符の表示も出ていた(写真8)。試しに「犬」を推してみたら、なかなか良い値段が表示された。そういえば、リードを付けた犬と一緒に地下鉄に乗っている人がいた。一方、ケージに入れて抱えていた人もいる。自走している犬には切符が必要で、ケージに入っていれば不要なのだろうか。

地下鉄の自動販売機には「Dog」のボタンもあったが、自分で切符を買う犬には出会えなかった【写真8】地下鉄の自動販売機には「Dog」のボタンもあったが、自分で切符を買う犬には出会えなかった

 自販機でICカードを購入して、人々がタッチしているポールにカードを触れてみた(写真9)が、「ビビビッ」と警告音。チャージ不足かと思い、レシートを見たがチャージはされている。よく見渡すと、ポールには二種類あり、触れたポールは降りてきた人達がICカードをかざしている。そこで、もう1種類のポールにかざすと、「ピンポン」と良好な音がした。デンマーク語で「乗車」「降車」と書かれてきたのだろう。色分けまでされていたが、気がつかなかった。うーむ、UIは難しい。

降車時にICカードをかざすポール。乗車時のそれは、文字盤が緑だったが形は同じ。デザインにもう一工夫欲しかった【写真9】降車時にICカードをかざすポール。乗車時のそれは、文字盤が緑だったが形は同じ。デザインにもう一工夫欲しかった

コペンハーゲンの街に現れる、移動自転車修理店。Webページも持っている【写真10】【付録】コペンハーゲンの街に現れる、移動自転車修理店。Webページも持っている

ライタープロフィール

杉沼浩司(すぎぬま こうじ)
日本大学生産工学部 講師(非常勤)/映像新聞 論説委員
カリフォルニア大学アーバイン校Ph.D.(電気・計算機工学)
いくつかの起業の後、ソニー(株)にて研究開発を担当。現在は、旅する計算機屋として活動中。

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