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Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:絵葉書は語る

Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:絵葉書は語る


 「旅する計算機屋」にとって、世界で通信が楽に行えるようになったのは大変に有り難い。1980年代は、音響カップラ(注:電話の送受話器にスピーカーとマイクをスッポリはめて、音響信号とディジタル信号の変換を行う装置)を持って海外に出た時期もあった。2000年代前半はディジタル通信が不安定で、移動中に携帯電話(2G/3G)を使ってPCとネットを使うには苦労があったが、4G時代になるとその苦労は嘘のように解消された。そんな便利な時代だからこそ、絵葉書を使っている。現地の素晴らしい景色や遺物が、これまた素晴らしい腕前の写真に収められている。

旅の荷物

 旅の荷物は、小さくなった。写真1は、2001年の欧州出張の際の電子機器だ。デジカメ、カムコーダ(ハンディカム)、PC(Mac)、そして電源やケーブル、と多くの機材を持ち歩かないと動画、静止画での記録を残せなかった。今では、スマートフォン1台あればすむ。

00011_image01.jpg【写真1】:2001年欧州出張時の電子機器。左上にPalm Pilot(互換機)も写っている。
Hi8のテープにディジタル記録するDigital8方式のカムコーダーが大きい。
今ならスマートフォン1台で多くの装置を代替できそうだ。

 通信環境も、大幅に改善された。1980年代は、パソコン通信を使って情報をやりとりした。この頃は、音響カップラを持ち歩いていた。公衆電話に音響カップラをつないで利用していたら、通過するパトカーのサイレン音で文字化けしたのは、今では笑い話だ。その後、接続は音響カップラからPC内蔵のモデム利用に替わっていた。時代は、インターネットになったが、世界各地のアクセスポイントに接続して、そこから加入するサービスプロバイダを経由してインターネットに入る方法だった。この頃は、世界各地のアクセスポイントの電話番号を記した「電話帳」を持ち歩いた。ワンタイムパスワード発行のためのトークンを、常に首からぶら下げていのたものこの頃だ。空港の荷物検査で、首から下げたトークンを引っ張り出すのを見て呆れられたことも何度かある。

 データローミングを使って、そのままインターネットにつなげるようになったのは、つい最近だ。その時代が来てしまうと当たり前だが、それもそのはず。技術開発する側が、この「当たり前」を目指して来たのだ。音響カップラやモデムといったハードウェア、アクセスポイントへの接続やトークンを使った認証、といったものは、現在に至る間には求められたが、理想型には描かれてこなかった。我々は、インターネットへの接続に、国内と海外の違いをほとんど感じない。いよいよ理想としてきた状態に到達したようだ。

旅情はハガキで

 インターネット以前の80年代からディジタル通信にどっぷりと浸かっているが、旅の報告はやっぱりハガキ、それも現地の絵葉書がよい。実際、海外に出張で出ても、観光することは滅多にない。観光できるとしたら、出張先がイベントとして観光を組んでくれた時くらいで、普段は行って、帰ってとなるだけだ。有名な観光地は素通りというのが、出張旅行者の現実となる。

 だから、絵葉書は欠かせない。有名な観光地を撮ったものもあるが、訪問先の街の写真もある。訪問時とは異なる季節の写真で「こんな風景なのか」と感心することも多い。絵葉書はプロの写真だから、自分で撮ったものよりも遥かに美しい。行った土地の様子を伝えるのに最適なのが、絵葉書なのだ。

切手に一苦労

 絵葉書は簡単に買えるが、切手を買うのに苦労することもある。アメリカでは、切手を売る場合に手数料を得ることが許されているようで、絵葉書の販売店で切手も同時に求めたら、思いがけない金額になったことがある。以後は用心して、切手はなるべく郵便局や郵便局の自動販売機で買ってきたが、これは行動を制限される。切手を大量に買っておいても、最近は毎年のように料金改定があるので差額処理が面倒だ。幸いに、よい方法が見つかった。アメリカの郵政公社は、2007年から「Forever Stamps」と呼ばれる無額面切手を発行している。これは、封書基本料金用切手だが、郵便料金が値上がりしても有効な切手だ。後に、この切手の国際版も発行された。そこで、アメリカ出張用にGlobal Forever Stampsを大量に買い込んだ。出張時には、この切手を持参して現地購入の絵葉書に貼り付けている。

 切手にまつわる楽しい思い出は、アラブ首長国連邦のドバイだ。ドバイ国際空港(DXB)で乗り継ぎ中に立ち寄った売店では、絵葉書は売っていたが切手は無い、という。ただ、この空港では、「ドバイ観光協会」(正式名称では無く、これに相当する英単語で説明された)のブースで投函代行をしてくれるということだった。切手代と手数料込を併せてお願いしたが、こちらは納得の価格だった。深夜でも、笑顔で投函代行を受け付けてくれたスタッフを今でも覚えている。

更に苦労はポスト

ポスト探しも意外に苦労する。ホテルでフロントに投函を頼むのが原則だが、移動の空き時間で絵葉書を記すとなると、空港でのちょっとした待ち時間に書く、といったことになる。ところが、空港で手荷物検査を越えるとポストが無い、という所も多い。空港で投函するにも、出発ロビーが最後のチャンス、と思っておいた方がよさそうだ。

 欧州だと、シェンゲン条約加盟国との間の路線が発着するターミナルは国内線と同様なので、ここにポストがある。スイス・チューリッヒ国際空港(ZRH)は、欧州路線が発着するターミナルにはいくつもポストがあってよく利用している(写真2)

00011_image02.jpg【写真2】:美術館のような美しさを持つチューリッヒ国際空港。
欧州便ターミナル内には、いくつもポストがある。
欧州大陸では、ポストは黄色という国が多いような気がする

例外的に、出国審査後にポストがあったのが、ロンドンのヒースロー国際空港(LHR)だ。前面は普通のイギリス風ポストだが、背後の回ると透明なプラスチックで作られていた(写真3)

 
左:写真(a)、右:写真(b)

【写真3】:ヒースロー空港で2005年に撮影。出国審査を抜けたところにあるポストは、
前から見ると普通の赤いポストだが(a)、背後に回ると透明な樹脂で作られていた(b)。

速度はそれぞれ

 さて、世界各地から絵葉書を送ると、必然的に「速度テスト」を行うことになる。これまで、何年も出張先から絵葉書を送っているが、行方不明になったハガキは1通だけ。その意味では、郵便システムは優秀だ。いや、このハガキも、最長到達日数記録を更新中なだけかも知れない。

 その記録だが、速いのはスイスとフィンランド。いずれも、金曜日に投函(消印は翌週月曜夜)して、日本の翌週木曜日に配達された。月曜日回収の木曜日配達だから、遠距離の国内便と変わらないかも知れない。スイスの郵便が迅速であることは定評があるが、発送元と配達先の両システムとも優秀な場合、こんな短時間で配達される。距離にもめげず、健闘したのがブラジル。まさに地球の裏側だが、投函から12日目で配達された(写真4)

 
左:写真(a)、右:写真(b)

【写真4】:ブラジル・サンパウロのグアルーリョス国際空港(GRU)内のポスト。
可愛いおむすび型をしたユニークな形状(a)。切手もきれいだった(b)。(2010年撮影)

  

ナショナルカラーが緑のアイルランドは、ポストも緑。(左/2006年撮影)
インドのポストは、赤。なかなかたくましい姿をしている。(中央/2005年撮影)
スペインのポストは黄色。王冠が描かれているのは、さすがに「王国」だけある。(右)

 何度試しても時間が掛かるのは、欧州のある国。日本との間で直行便が無かった頃は時間が掛かるのはわかるが、最近は直行便があるから郵便も速くなったかとおもいきや、余り変わらない。別に、追跡番号を付加したものでもなし、到着をゆっくり待つとするか。

ライタープロフィール

杉沼浩司(すぎぬま こうじ)
日本大学生産工学部 講師(非常勤)/映像新聞 論説委員
カリフォルニア大学アーバイン校Ph.D.(電気・計算機工学)
いくつかの起業の後、ソニー(株)にて研究開発を担当。現在は、旅する計算機屋として活動中。

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