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Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:電気あっての物種

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民生技術の展示会として、年明け早々の話題をさらう「CES2018」は、今年もラスベガス(アメリカ・ネバダ州)にて鳴り物入りで開催された。砂漠の真ん中ラスベガスだから、天気は晴れているかと思いきや、今年は2日間も雨にたたられた。そして、その雨が思いも掛けない混乱をもたらすとは、誰が予想したであろうか。

新年の大イベント

 民生技術(Consumer Technology)の展示会であるCESは、いまだに「家電製品の展示会であるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」と紹介されることがある。今年のCESを報じる新聞記事でも「世界最大の家電見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」との表現が使われていた。主催者は、以前から報道向け資料に『"展示会の公式名は「CES[R]」です。「Consumer Electronics Show(家電ショー)」または「International CES(インターナショナルCES)」という表記は使用しないでください。』と記しているのだが、いまだに浸透しないようだ。それだけ、「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」という呼び方が定着しているのか。それとも「家電」という説明が無いと「CES」だけでは浮いてしまうと判断されているのだろう。「家電展示会」として1967年にニューヨークで始まった展示会は、家電の枠を飛び出して、「軍事技術以外のすべて」を扱うものとなった。

 CESは、以前は「Summer CES」、「Winter CES」と呼ばれる「家電」展示会で、メーカーがバイヤーに新商品をアピールする場だった。夏季はシカゴ(イリノイ州)、冬季はラスベガスで開催された時代は白物家電も含めた展示会だった。

 その後、PCの台頭でCESもPC(IT)を展示項目に含め、2000年台に入ると自動車業界もこの展示会に出展するようになった。今では、デジタルマーケィング、AIなどに範囲を拡げ、来場者も18万人を越える(2017年実績)ラスベガスで最大の展示会となった。

波乱含みの始まり

 今年のCESは1月9日から12日までということになっている。しかし、実際には、2日前の1月7日に始まる。この日の午後から記者会見が始まるのだ。

 ところが、最初に行われる記者会見がキャンセルになったという。原因は、東海岸の悪天候。会見を行う人達が来られなかったそうだ。年初来、アメリカ東部は悪天候が続き、交通が大きく乱れていた。CESを主催するCTA(所在地:バージニア州アーリントン)のスタッフも「東海岸は大変」とこぼしていた。

 CESの開幕を飾るイベントは、展示会場開場前日の晩に開催される「前夜基調講演」だろう。2008年までは、米Microsoft社のBill Gates(ビル・ゲイツ)氏の指定席だった。その後、同社のSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏が引き継ぎ2012年まで基調講演を行った。Gates氏がCESで基調講演を始めたばかりの頃は、前年11月に開催されていた「COMDEX」での同氏の基調講演の焼き直しと評された時期もあったが、COMDEXがラスベガスで行われなくなってからは、PCの世界からのメッセージとして重要視されていた。Microsoft社が前夜基調講演に現れなくなってから、このスロットにはいくつかの企業トップが登場した。今回は、IntelのBrian Krzanich(ブライアン・クルザニッチ)氏が基調講演を行った。

 CESは、今年から基調講演に使用する会場を拡大した。従来のベネチアンホテルのボールルーム(宴会場)に加えて、モンテカルロホテルのパーク・シアターを基調講演会場としている。ベネチアンホテルの会場は、約3000人を収容できるが、パーク・シアターは約5000人と段違いの容量だ(写真1)

00008_image01.jpg【写真1】基調講演前のパークシアター。スタジアム型の座席で、見晴らしがよい(前夜祭)

 18時20分から前座のイベントが始まったが、この頃、既にラスベガスでは雨が「ポツポツ」と降り始めていた。珍しい、ラスベガスの雨である。ラスベガスは、年間降水量は10インチ(254mm)以下であり、まさに砂漠の中の街だ。確かに1月は雨が多い時期だが、CESで雨になった記憶はあまりない。

 Krzanich氏が講演を終えた20時30分頃は、外は大雨、道路は川のように水が流れていた。

雨で始まる初日

 開場初日の9日も、午前中は雨だった。こうなると、晴天を想定しているCESの輸送計画は大変だ。現在、CESは3つの会場(地域)で行われている。会場間を結ぶバスへの乗降は屋外で行うため、移動する人々は雨に打たれることになる。もちろん、準備のよい人達もいたが、「ラスベガスは砂漠、雨は降らない」と決め込んで雨具の用意が無かった人も多かったようだ。

 幸い、午後には雨も上がり、夕方には青空も見え始めた(写真2)。しかし、これだけでは安心できない。建物の雨漏りである。建物の雨漏りは、防水層の破れ目を通って、長い時間を掛けてしみ出してくることがある。雨が止んだからといって、雨漏りが起きないとは言えないのだ。案の定、会場やホテルの至る所で、ポツリ、ポツリと水が落ちていた。

00008_image02.jpg【写真2】会場間を結ぶバスを降りたところ。道路は濡れているが、青空も見え始めた(初日)

快晴の2日目に

 翌10日は快晴。これでこそ、ラスベガスといった気持ちのよい天気だった(写真3)。ところが、悲劇は午前11時15分に起きた。ラスベガス・コンベンションセンターのセントラルホールと、サウスブリッジ・ミーティングルーム(セントラルとサウスの間にあるミーティングルーム)、そしてサウスホールの電源が落ちたのだ。サウスホールはすぐに回復したが、セントラルホールとミーティングルームは、回復に約2時間を要した。セントラルホールは、いわゆる「家電」中心の展示会場で、テレビなどのAV機器やカメラを扱う企業がブースを連ねている。

00008_image03.jpg【写真3】2日目はいかにもラスベガス、といった気持ちのよい青空だった。しかし、、

 停電時、ノースホールにいて全く気付かなかった。しかし、当時、セントラルホールの中央回廊を撮影した写真(写真4)を見ると、普段なら明るいセントラルホールの方が真っ暗だ。そして中央回廊には、人が溢れている。撮影時は「さすが、来場者18万人。すごい混雑だ」と思ったが、そうではなかった。ホールには入れず、動きが取れないのだ。更に、写真を見ると中央回廊のブースも、モニターが消えている。一部の電源系統は影響を受けたのだろう。

00008_image04.jpg【写真4】停電から約30分後の中央通路。セントラルホール出入口は暗く、
通路はごった返している。展示のモニターも消灯している

 この停電は、同日夜の全国ニュースでも報じられた。「家電の展示会は、電気が無くては展示が台無し」とのニュアンスで報じられたが、まさにそうだ。ニュースでのインタビューを聞くと、人々は口々に「スマートフォンを懐中電灯代わりにした」とか「座って、スマートフォンを触っていた」と答えていた。使い方に差はあれ、スマートフォンが役に立ったようだ。

来年はエネルギー重視か?

 今年のCESに加えられた新機軸は「スマートシティ」だった(写真5)。自動車、AIは、スマートシティを構成する要素であり部品であり、スマートシティが次の主役だ。「CESはAIや自動車が主役」というのは、表層的な見方だろう。政府でスマートシティ政策を推進する米国運輸省(USDOT)のElaine Chao(イレーン・チャオ)長官を招いてCTAのCEOであるGary Shapiro(ゲリー・シャピロ)氏が対談を行っている。

00008_image05.jpg【写真5】ウェストゲートホテルで開催されたスマートシティ関連の展示は大盛況だった

 スマートシティが対応すべき事柄に、エネルギー問題がある。今年のCESは、停電というまさにエネルギーの問題が起きた。来年のCESには、ブースの電力は自分でまかなう会社がやってくるかも知れない。

ライタープロフィール

杉沼浩司(すぎぬま こうじ)
日本大学生産工学部 講師(非常勤)/映像新聞 論説委員
カリフォルニア大学アーバイン校Ph.D.(電気・計算機工学)
いくつかの起業の後、ソニー(株)にて研究開発を担当。現在は、旅する計算機屋として活動中。

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