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Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:IoTは世界規模へ

Dr.スギヌマのITランダム・ウォーカー:IoTは世界規模へ


 IoT(Internet of Things)の関心が高まって久しいが、実際のIoT化にはいろいろな問題がある。そもそも、IoTと言っても、どこにどうつながるかで使う通信技術も、行える事も変わってくる。今回は、セルラー(携帯電話)網につながるIoTを中心に、2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress(写真1)での発表と併せて考えてみたい。

00012_image01.jpg【写真1】「Mobile World Congress 2018」では、5GやIoTなど移動体通信の技術、サービスが幅広く展示された。

IoTの意義は何か

  IoTは、1990年代に提唱された概念だが、当初は「RFIDリーダーの受信部と表示部を分離して、間をインターネットで結ぶ」といった程度の意味で考えられていたようだ。読み取る相手はRFIDのタグ、つまりIDのような固定された情報を遠隔地から受け取ることを「原始IoT」では想定していた。現在論じられているIoTは、それよりはるかに高度なものだ。伝えられる情報は、IDではなく、対象物に取り付けられたセンサが読み取った値、となるのが一般的だ。そして、IoTでは読み取るだけが目的ではない。読み取り対象を包含する「全体(=システム)の最適化を図る」ことがIoTの要諦であると筆者は考えている。最適化が無いのは単なるデータ読み取りであり、IoTと名乗るに値しない、と言えるだろう。ここで言う最適化は、時間短縮かも知れないし、品質向上かも知れない。達成目標とする事項は、業種や状況によって変わってくる。しかし、最適化が重要だ。もちろん、この最適化が自動化されているのがベストだ。

00012_image02.jpg IoTというと、対象となるデバイスすべてが遠大な距離をインターネットを介してつながるかの印象があるが、実態はそうではない。スウェーデンの通信機器メーカーEricssonの推計では、無線LANやBluetooth、ZigBeeなどを使って100m程度の距離で運用しているIoTは2017年の時点で64億台である。一方、セルラー網や免許不要のLPWA(SigfoxやLoRa)につながっているものは6億台だ。もちろん、無線LANの先でインターネットにつながったりするが、少なくとも自動車や貨物といった、大規模に動く「モノ」のIoT化はまだまだと言える(写真2)。たとえば、自動車は2015年末時点で世界に12億6000万台強という(一般社団法人日本自動車工業会のデータ)。まだ、自動車がIoT化されたという状況にはなっていない。

【写真2】自動車の中では、トラックのIoT化が進んでいる。Daimler Trucks(ドイツ)やSCANIA(スウェーデン)は、現在出荷する全てのトラックが「コネクテッド」だとしており、運用情報や機器健康情報が随時通報されている(MWC2017にて撮影)。

IoTは急伸

 前出のEricssonの推計では、セルラーIoTは、2023年にかけて年率26%の伸びを見せ24億台に達するとしている。一方、近距離のIoTも年率18%で伸び2023年には174億台になるという。同資料は、2023年のモバイルブロードバンド契約は91億件と推測しているので、セルラーIoTによる「モノ」の利用は「ヒト」の利用の4分の1を越えるし、「モノ」全体ではヒトの利用の2倍を超えることになる。5G時代は「モノの接続」の時代と言われてきたが、この数字にも期待が表われている。未来はともかく、2017年末時点でも無線LANかセルラーかを別にして「つながるモノ」の台数(70億台)は、は人間が「つなぐ」台数(携帯電話機とPC等の接続を合わせて91億台)に肉迫している。

 人間の場合、電話を持つにしても、多くで2台程度であり、世界中の人が電話契約をしても150億契約程度にすぎない。しかし、人間を取り巻く「モノ」が通信するとなると、その数は膨大だ。1人の周りで10台のデバイスが通信しても不思議では無いし、経済が発展した国・地域ほど「通信するモノ」の台数は増えるだろう。人間への普及が飽和に近づく今、モノが通信することは通信ビジネス的に魅力であろう。

その先の未来

ビジネスとしてのみならず、「より良い世界」のためにも、「通信するモノ」は必要だ。通信できないために、分からない事が多い。通信できれば、状況が分かり素早い対応が可能だ。素早い対応とは、「傷口が大きくなる前に防ぐ」ことであり「傷が付く前に防ぐ」ことでもある。この「傷が付く前に防ぐ」こと、つまり回避は非常に重要だ。よからぬ物事が起きてからの対応よりも、その様な事が起きないように回避した方がずっと低いコストで済むと見られている。多少、通信にコストが掛かっても、問題が起きる前に対応できれば、そのコストなど安いモノ、となることが期待できる。

世界をカバー

 現実的な通信方式が無線LANだった頃は、IoTデバイスと無線LANをつなぎ、その先はインターネットを通じて遠隔地に情報を送っていた。しかし、この方法では無線LANのエリアを出ると通信できなくなってしまう。次にセルラー通信が登場した。これで、ローミングする限りは通信可能だ。しかし、IoTデバイスが携帯電話基地局のサービス範囲外(たとえば、海の上や砂漠の真ん中)に行ってしまったらどうしよう。

 一つの方法は、衛星通信を利用することだ。以前は、衛星通信は、機器の大きさと消費電力、そして通信コストから非現実的なものであるか、それともコストを気にしない用途専用のものと思われていた。しかし、機器、サービスの急速な進化で十分に使えるものになっている。

 たとえば、CES2018で出展されていたGlobalstar社のサービスは、IoT指向で十分に廉価だ。また、通信装置も極めて小さい(写真3)。衛星通信用ユニットは500円硬貨ほどの大きさで、消費電流は500mA以下だ。もちろん、地上のセルラー型LPWAよりは遥かに大きな電力だが、衛星通信に何Wもの電力を使う必要はなく、電池で十分に駆動できる。半導体技術、信号処理技術の進歩と、低軌道衛星(Globalstarは、高度1414kmの軌道)の利用が、IoT衛星通信を現実の物にしたといえる。

00012_image03.jpg【写真3】Globalstar社の衛星通信モジュールは、小さなものは硬貨サイズ(左)。
これにアンテナをつなげば同社が保有する衛星群を通じた衛星通信が可能となる。
サービスエリアは、世界のほとんどの地域だ(CES2018にて撮影)。

キャリアを結ぶ

別の形での世界サービスは、MWC2018で発表された。Nokia(フィンランド)の「Nokia Worldwide IoT Network Grid (WING)」は、世界の携帯電話事業者のIoTサービスを結んで、全地球的サービスを実現するものだ(写真4)。従来、世界サービスを実現したい通信事業者は、各国の同業者と交渉して、自力でローミング網を作らなければならなかった。この作業が不要になり、Nokia WINGと契約するだけで、世界網を形成できる。国際的に状況を把握したい事業者には大変に便利なサービスとなる。

00012_image04.jpg【写真4】Nokiaは、MWC開始前日の会見で、世界の通信事業者を結んだIoTサービス「Nokia WING」を発表した。

次の勝負は最適化へ

IoTのための足回りは揃った。至る所に散在するモノから、データを集めることは豊富な通信手段により行える。次のステップは、このデータを集積し、解析し、最適化へ活かす道だ。集積や解析は、そのためのプラットフォームができつつある。問題は、最適化だ。各業務の何を、どう最適化したいかで、この部分の作りも変わってくる。ここは、当面は手作りになるだろう。やがて、ツールが揃い、最適化を自動化(もしくは半自動化)するツールや、機械学習により成長するツーツも現れるに違いない。そして、原因を見抜き将来への対応の助言が始まる。その第一歩が最適化であると考えれば、IoT向けの最適化は、極めて大きなテーマといえるだろう。

ライタープロフィール

杉沼浩司(すぎぬま こうじ)
日本大学生産工学部 講師(非常勤)/映像新聞 論説委員
カリフォルニア大学アーバイン校Ph.D.(電気・計算機工学)
いくつかの起業の後、ソニー(株)にて研究開発を担当。現在は、旅する計算機屋として活動中。

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